手首の病気といえば通常骨折を思い浮かべますが、骨壊死という病気もあります。
大工さんや調理師さんなど手をよく使う仕事をしており、利き手側の手首に痛みがあって、手根骨の月状骨背側に圧痛(皮ふに圧を加えた時に感ずる痛み)がある場合はもしかしてキーンベック病かもしれません。
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目次
月状骨の骨壊死
キーンベック病は手首の手根骨の一つである月状骨が骨壊死を起こして、潰れて扁平化する病気をいいます。骨壊死とは病気や外傷で骨に栄養を運ぶ血液が断たれて血行不良になり骨組織が死んだ状態で、骨が衰えていきます。骨が腐った状態とは違います。
手根骨は8つの骨からなり、遠位(カラダに遠い側)は大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、そして有鈎骨が並んで遠位手根骨を構成してます。近位(カラダに近い側)には外側(拇指)から内側(小指)に向かって、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨が並んで近位手根骨を構成してます。
月状骨は近位手根骨のほぼ真ん中に位置します。周りはほぼ軟骨に取り囲まれていて血行に乏しく、血行障害になりやすくて骨壊死になりやすい骨の代表といわれてます。症状が進行すると骨壊死した月状骨は圧潰といって潰れて扁平化します。

症状の進行度
キーベック病は症状の進行度により単純X線(レントゲン)撮影により「Llichtmanの分類」というstageが1〜4に分類されますといいます。
stage 1
単純X線(レントゲン)画像ではほとんど異常はありません。手首の痛みなどの症状がある場合、MRI検査を行なって始めて異常が指摘される場合があります。
stage 2
キーンベック病は骨形成が行われてカルシウム量が増え、骨が硬くなります。カルシウム量が増えるとX線画像では、その部分が周囲より白く写り、これを硬化像といいます。
このステージは単純X線(レントゲン)画像で硬化像が指摘されますが、圧潰は認められません。
stage3
単純X線(レントゲン)画像で月状骨の圧潰、扁平化が認められるようになります(赤矢印)。また、有頭骨が白矢印のように近位(体の近く)へ移動します。舟状骨・月状骨解離の有無で3Aと3Bに分けられます。

stage4
月状骨だけでなく周囲の手根骨や橈骨に関節症の変化が見られます(赤い領域)。
原因
職業的に大工さんや調理師、肉体労働などで手をよく使う仕事をする青年の男性に発病することが多いといわれてます。利き手側に発病する特徴があります。仕事で手の使いすぎにより、月状骨の骨折や月状骨に微細な外傷が反復されることにより栄養血管の血流障害によって起こるなどが考えられます。しかし、高齢の女性にも発病することがあり、ハッキリした原因は不明だそうです。
症状
キーンベック病は手首の痛みが主症状となります。発症時は手首を動かす時に痛み、安静にすると痛みが消えますが、症状が進行すると安静時にも痛みがあるようになります。また、握力が低下して手首の動きが悪くなって関節の可動制限があったり、手首が腫れたりすることがあります。病気が進行すると日常生活に支障をきたすようになります。
画像検査
単純X線(レントゲン)撮影
キーンベック病を疑った場合、病院や診療所などを受診すると、まず単純X線(レントゲン)撮影を行います。病気が進行している場合(stage2〜4)は臨床症状と単純X線(レントゲン)撮影だけで診断がつきます。
患者さんが訴える症状。ドクターの診察による所見
月状骨 骨硬化イメージ像 stage2
月状骨が周囲の骨より白く写る硬化像を認めます(赤矢印)。

月状骨 圧潰イメージ像 stage3
月状骨の骨が潰れた圧潰像が認められ、扁平化しています(赤矢印)。
MRI検査
キーンベック病の初期(stage1)は単純X線(レントゲン)撮影では異常がありませんが、MRI検査では診断が可能となります。

T1強調像 冠状断 月状骨 骨壊死 イメージ像
月状骨の骨壊死はT1強調像で低信号(黒く写る)になります(赤丸)。

まとめ
キーンベック病はそのまま放置すると骨壊死などで骨の破壊が進行し、自然に治ることはありません。Llichtmanの分類でstage3やstage4まで病気が進行すると治療も困難になります。したがって、早期にから治療を始めることが大切といわれます。ただ、キーンベック病の初期は単純X線(レントゲン)撮影では異常所見が少なく診断は難しくなります。したがって早期発見のためには手関節痛があるうえに月状骨の背側に圧痛があるなどの臨床症状に加えて、MRI検査を行うことが大切になります。
手を酷使しする仕事をしており、手首に痛みがあって手根骨の月状骨背側に圧痛(皮ふに圧を加えた時に感ずる痛み)が続く場合は整形外科専門医への受診をオススメします。
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