両足が空中に浮いている瞬間があるため、体重の2〜3倍の負荷が体にかかるといわれているジョギングとは違い自転車は両脚は常にペダルの上にあり、カラダにかかる衝撃はジョギングに比べて圧倒的に少ない自転車です。特に膝に優しい運動ですから、とりわけ「体重の重い人」ほどおススメです…
そんな甘い言葉を信じて、シニア世代の皆さんが大枚のお金をはたいてロードバイクを代表とするスポーツバイクを購入した方も多いのではないでしょうか。
自転車が膝に優しいのは事実です。しかしそれは軽い運動量での話です。自転車は軽く漕げばとてもカラダに優しい運動な反面、とてもヘビーな運動の面もあります。前傾のポジショニングで長時間、長距離にわたって膝の屈伸運動を繰り返すロードバイクの場合は、自転車に乗ることによる膝の痛みが実は非常に多くなってます。
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目次
膝前面の痛み
自転車に乗った時に1分間にペダルを回す回転数をケイデンスと言い、単位は(rpm)で表します。通常は70〜90(rpm)程度のケイデンスでサイクリングをおこないますので、単純計算で1時間に4200〜5400回転にもなります。それが1日のロングライドともなると数万回転にもなり、普通では考えられないほどの負担が膝にかかることになります。そんな時に関節の外にある靭帯や腱などの骨に付着する部分が炎症などの障害を起こします。
そんな自転車に乗ることにより起こる膝の痛みの中で、膝の外側が痛くなる腸脛靭帯炎とともに多いのが膝の前面にあるお皿、つまり膝蓋骨周辺に痛みであります。
症状
膝前面の痛みはいくつか原因がありますが、お皿の下が痛む「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)」とお皿の上の腱が痛む「大腿四頭筋腱炎(だいたいしとうきんけんえん)」が多いと言われてます。
原因
自転車のペダリングによって膝の前面にある大腿四頭筋腱や膝蓋腱が膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨や下腿の脛骨との付着部に、赤矢印の様な力が繰り返し加わることにより腱の付着部に障害が生じます(赤い領域)。そのことにより膝前面の膝蓋骨周辺に痛みが生じます。
膝前面の痛み正面 イメージ像

膝前面の痛み 側面イメージ像

画像検査
膝前面の痛みの診断は臨床症状が決め手となります。膝前面が痛む場合に膝蓋骨周辺を押さえると痛いところがあります。膝蓋骨の下が痛む場合「膝蓋腱炎」、膝蓋骨の上が痛む場合は「大腿四頭筋腱炎」の可能性があります。
画像検査でまず行う単純X線(レントゲン)撮影では膝蓋骨周辺の靭帯や腱などの軟部組織は残念ながら描出することはできません。しかし、膝蓋骨や膝蓋腱周辺が痛む病気には膝蓋骨などの骨折も考えられますので、単純X線(レントゲン)撮影も大切な検査となってます。
炎症部位等の精密検査のためにはMRI検査を行う場合があります。MRI検査では膝蓋腱炎の膝蓋骨下部の炎症部位などが描出することができます。
また最近では整形外科領域も単純X線(レントゲン)撮影では写らない腱や靭帯などの軟部組織も検査できる超音波検査(エコー検査)を積極的に取り入れている医療機関も増えてきました。
MRI検査 T2強調像 側面 脂肪抑制像 膝蓋腱炎 イメージ像
赤矢印の様に膝蓋骨下極の膝蓋腱付着部が高信号といって、白く描出されてます。MRI検査のT2強調像では多くの場合に炎症等は異常に白く写る部分として描出されます。

まとめ
自転車に乗ることによって、膝に痛みが生じた場合はまずアイシングが効果的です。痛みがある場合はとりあえず安静が大事です。また柔軟性を高めるため日々のストレッチは大切です。症状が長引く様でしたら、膝周辺のその他の病気も考えられます。一度専門医への受診をオススメします。
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