大谷選手も損傷 内側型の「野球肘」内側側副靱帯損傷とその画像

肘痛

ピッチャーとバッターの二刀流でチャレンジしているエンゼルスの大谷翔平選手はシーズン途中に右肘のMRI検査を受けた結果、内側側副靱帯にグレード2の損傷が新たに発見され、シーズン終了と同時に靱帯再建手術(いわゆるトミー・ジョン手術)を受けたとの報道がありました。肘の検査といえばまずX線単純撮影(レントゲン)です。また、最近はCTもよく使われますが、いずれも骨はよくわかるのですが、残念ながら靭帯などの柔らかい組織は描出することができません。そこで靭帯などを見るには超音波検査(エコー)やMRI検査が用いられます。これまでも多くの大リーグを含めたプロ野球のピッチャーが手術を行ってきました。その診断の根拠となる検査がこのMRI検査になります。

野球肘とは

ぞくに「野球肘」とは何かというと、野球の繰り返す投球動作により肘を痛めるスポーツ障害の総称だそうです。その野球肘には2種類あります。

離脱性骨軟骨炎(外側型野球肘)

肘の外側に発生し、肘の上の上腕骨と下の橈骨(とうこつ)が、投球動作でぶつかる力がかかり続けることで、骨の表面にある関節軟骨を傷つけていきます。

ピッチャー

外側型の「野球肘」離断性骨軟骨炎とその画像

2019年2月10日

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内側側副靭帯損傷(内側型野球肘)

肘の内側に発生し、投球動作によって肘の内側に離れようとする力が繰り返しかかることによって、骨と骨をつなぐ内側側副靭帯自体が損傷されます。今回報道で大谷選手が受傷したのはこの内側側副靱帯であります。

肘の靱帯損傷の程度

肘の靭帯損傷はグレード1から3までの3段階に分かれます。

グレード1

靱帯が張っていて伸びてはいない状態だが、痛みがある症状だそうです。大谷選手は以前ケガをした時は「グレード1」と診断され、手術は回避されました。

グレード2

今回大谷選手が診断された「グレード2」の症状は、靭帯の部分断裂または靭帯が伸びた状態であり、腕を動かすことは可能だそうです。「グレード2」における靭帯のダメージ度合いは様々だそうです。

グレード3

グレード3は完全な断裂を指すそうです。

肘の内側側副靱帯損傷イメージ像

正面像

肘の内側側副靱帯の損傷は、野球の投球動作の繰り返しで下図の青矢印のような「牽引力」により内側の靭帯が引っ張られて損傷します。肘

側面像

内側側副靱帯の前部繊維束及び後部線維束が損傷してます(赤矢印)。
肘

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肘のMRI検査

MRIは非常に強い磁場のCTより大きなトンネルにカラダを入れ、ラジオのような強い電波を利用して人体のさまざまな断面を得ることができる検査です。たとえ肘だけでも、検査時はカラダ全体を下図のように大きなトンネルに入れて検査を行います。X線を使用しませんので放射線被ばくはありません。X線を使うCTに比べると靭帯など柔らかな組織の検査に適しております。

肘MRI

肘のMRI 検査は特に靭帯や神経などの細かな構造が対象になることが多いので. 上図のように通常は仰欧位(あおむけ)で腕を下ろした状態で、患部に表面コイル(円形または長方形)または巻き型のコイルを用いて検査を行います。ただ、MRIのトンネルの部分(ガントリーといいます)は60〜70cm程度と普通の日本人なら余裕のサイズですが、大谷選手のような体格の大きい患者さんを検査をする時はポジションニングやコイルの設置に苦労します。また部位的に動きやすい場所であるため、アーチファクトと呼ばれる患者さんの動きによる偽像が発生しやすく、技師泣かせの検査部位のひとつです。検査時間はドクターからの依頼内容によりますが、通常は30〜60分程度かかります。

肘のMRI検査は基本的に冠状断矢状断プロトン密度強調画像とT2*強調画像(ティー・ツー・スター強調画像といいます)を撮像します。プロトン密度強調画像に脂肪抑制を併用して撮像することにより、骨髄の高信号が抑制されて靭帯損傷がわかりやすくなる場合があります。MRI検査はT2*強調画像ではなくT2強調画像を撮像する事が多いのですが、関節などの検査で靭帯や腱などを見る場合はT2*強調画像で撮像する事が多くなります。

MRI検査では通常靭帯、腱などは低信号(黒く写る)に描出されます。断裂や損傷がある場合はその部位が高信号(白く写る)に描出されます。
*はアスタリスクっていう記号でスターと読みます。

肘の内側側副靱帯損傷MRIイメージ像

T2*強調像冠状断 内側側副靱帯損傷のイメージ像

内側側副靱帯の不連続性を認めます(赤丸)。

肘MRI

肘の靭帯損傷の分類でグレード2の診断はスポーツ専門で経験豊富なドクターでないとなかなか難しいと思われます。

まとめ

ある報告でアメリカの開幕ローテーション入りした全投手に関して、過去にトミー・ジョン手術を受けたことがあるか調査したところ全体の約34.4%にも達していたそうです。日本のプロ野球では出場選手登録されていたピッチャーが過去に靭帯の移植手術を受けた割合をはわずかに4.4%だったそうです。アメリカの場合は3人に1人はトミー・ジョン手術を受けていることになり、とても驚きです。日本のピッチャーが大リーグに移籍すると、多くの選手が数年後には手術になるイメージがありますが、このような治療に対する考え方の違いもあるのでしょうか?

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